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2007.02.14

映画『マリー・アントワネット』

 昨年末にミュージカルの『マリー・アントワネット』を観たが,今回は映画。この映画の予告編を観たときは,正直言って「どうかな?」と思った。アントワネット役のキルスティン・ダンストは大して美人じゃないし,女王様タイプでもない。私のイメージするマリー・アントワネット像とは大きく掛け離れていた。それに現代的な感覚の導入(ポップな色調やロック音楽の使用等)が,果たして功を奏するのかどうか甚だ疑問に感じられた。安っぽくなってしまうんじゃないという不安があったのだ。

 しかし,それは杞憂に過ぎず,意外なほど違和感を覚えずに楽しめた。作品をモダン化したことによって,アントワネットがより身近でいきいきとした等身大の女性に感じられたし,ロックを使うことで躍動感が出ていた。予告編では浮き気味に思えた色彩も,若々しく軽やかな雰囲気を醸すのに大きな役割を果たしていた。このあたりのソフィア・コッポラ監督の絶妙な匙加減やセンスには本当に瞠目する。それにこの監督はアントワネットのよき理解者であり,彼女に同情的である。

 弱冠14歳にして,ほぼ単身でヴェルサイユに乗り込まざるを得なかった彼女。馬鹿げた習慣やくだらない噂話にうんざりしながらも,それをあからさまにするわけにもいかず,フランス皇太子妃になった“オーストリア女”への羨望と好奇の入り混じった意地悪な視線に耐えることを余儀なくされ,そのうえ「お世継ぎを産む」という重大な任務に対して矢のような催促を受け続けたのだ。しかし彼女に女性としての関心を示さない夫に対して,ティーンエイジャーの彼女がいったいどんな手段を講じられたというのだろうか?今のように性に対する情報が氾濫しているご時世ではあるまいし。さすがに母国においてもそんな“お妃教育”までは受けていなかっただろうに。

 「彼女が洋服や宝飾品に湯水のようにお金を使ったのは,こうした数々のストレスを解消するため。これが彼女にとって唯一可能だった現実逃避の手段だった」という解釈で,それはそれで納得できた。

 キルスティン・ダンストの演じるアントワネットは,決してわがままで高慢な女性ではない。お世辞にも賢いとは言えないけれど,彼女なりにいろいろと努力しているし,周囲の助言にも耳を傾けようとしている。心優しく,ロマンティックな一面を持ち,芸術的な才能にも恵まれている。しかし時間と富と権力を有り余るほど持ち,それを存分に行使したにもかかわらず,結婚後の彼女の生涯で最も幸福で充実していたのは,フェルゼンと恋愛関係にあったわずかな期間と子供たちと過ごした短い期間だけだった(ように思えた)のはとても皮肉である。

 実際のヴェルサイユ宮殿を使用した映像はさすがに美しく,それだけでも観る甲斐はある。これは劇場の大画面で観た方が堪能できると思う。でも所詮は婦女子好みの映画かな?

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