WE WILL ROCK YOU
ガリレオ:ピーター・マーフィー
スカラムーシュ:ピパ・グランディソン
キラー・クイーン:メリッサ・ラングトン
カショーギ:ロス・ギルヴェン
ポップ:ロバート・グラブ
ブリット(ブリトニー・スピアーズ):ダニエル・フレッチャー
オズ(オジー・オズボーン):ケイト・マリー・フリハン
脚本:ベン・エルトン
ミュージック・スーパーバイザー:ブライアン・メイ,ロジャー・テイラー
ステージデザイン:マーク・フィッシャー
照明デザイン:ウィリー・ウィリアムス
新宿コマ劇場にて。
昨年に続き,2年連続の来日公演となったWE WILL ROCK YOU。昨年は気になりつつも,結局行けず仕舞いに終わってしまったが,今年は東京の楽日前日になんとか観ることができた。これは2002年5月14日にロンドン・ウエストエンドのドミニオン・シアターで開幕した作品で,ロバート・デ・ニーロが総制作費15億円のうち,9億円を出したそうである。そんなに金がかかっているのか,このミュージカル…。
80年代のヒット曲を使用したミュージカルでは,今までに「マンマ・ミーア」と「ムーヴィン・アウト」を観たけれど,この作品が一番コンサートのノリに近い。開幕前から客席には色とりどりのサイリウム(スティックライト)を手にした人達がたくさんいて,これから始まるステージへの期待感を盛り上げる。客電が落ちると,サイリウムの輝きはいっそう幻想的に写り,観客を非日常的空間へといざなう。
物語は2300年代だったか,正確なことは忘れてしまったけれど,とにかく未来の世界のお話。(マイクロソフト社ならぬ)グローバルソフト社が支配する世界では人間はクローン化され,ファッションも流行も全てコントロール下にある。楽器というものは存在せず,音楽はプログラム化されているものしか楽しむことはできない。そんな体制に反逆する若者が現れて…というもの。想定上は未来のことだが,現在,すでにそんなレールの上に我々は置かれているのではないか?という懸念が脳裏を横切る。
…なんて,ちょっとシリアスなことを書いたが,はっきり言ってストーリー的にはツッコミどころも多い。しかし,それは前述の「マンマ・ミーア」や「ムーヴィン・アウト」も同じこと。それを補って余りある音楽の魅力でステージを牽引するのが,この種のミュージカルの強みである。通常のミュージカルの場合,1つの作品中に名曲が3~4曲あれば上等な方で,あとは記憶に残らないような曲が占めている。ところがこの種のミュージカルでは,ミリオンセラーとなったような楽曲が次から次へと繰り出されていくのである。それだけでも,ものすごいアドバンテージだ。しかも多くの観客は,もともとこれらの曲が好きで会場に足を運んでいるのだ。クイーンにそんなに思い入れがあるわけではない私でさえ,その楽曲のパワーに充分酔いしれたのだから,これらの曲に色々な思い出がある人にとっては,ライヴで体感できただけで,もう涙が出そうなくらい感慨深いに違いない。
ポール・ロジャースが加わった“新生クイーン”は2005年のワールドツアーで大成功を収めたそうだが,フレディ・マーキュリー亡き今(今年が没後15年とのこと)となっては,もうオリジナルの形で楽しむことはできない。このように当事者の手を離れ,第2世代に受け渡されて,作品は初めて“古典化”されるのだな…と,考えてみれば至極当然のことをステージを見つめながら実感していた。今はまだオリジナルを体験している人がたくさんいるけれど,やがて誰もいなくなってしまう日が確実にやってくる。そういう日を迎えても,これらの曲は忘れ去られることなく歌い継がれ,多種多様なアレンジや解釈が試みられるに違いない。オリジナルとは似ても似つかぬものも現れるだろうし,当事者には思いも寄らなかったようなポテンシャルを引き出す者が現れるかもしれない。アーティストの個性や時代の嗜好に寄り添って変容しながら,作品は生き長らえていく。この種のミュージカルは,80年代ポップス(ロック)を“古典化”するための極めて有効な手段のひとつなのだと合点した。


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